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Home vol.37:市民公開講座 寝たきりにならないために、知っておきたい!「背骨の知識」

いつまでも元気に歩ける足腰を保つために、大切なのは「背骨」。そこで、今年1月25日に院内で開催された市民公開講座では、背骨の病気についての知識や、正しい姿勢をつくるための体操について当院の専門家がわかりやすく解説しました。そのお話の中から大事なポイントをご紹介します。

整形外科 部長 伊藤英人
講師 : 整形外科 部長 伊藤 英人

要介護になる原因第1位は「ロコモ」

 ロコモティブシンドローム(運動器症候群)ということばを知っていますか。年を重ねるに従って筋肉や脊髄、関節などの運動器が障害され、歩けなくなったり立ち上がれなくなったりして介護が必要となる病気の総称です。近年、要介護・要支援になる原因の第1位はこのロコモです。
▼厚生労働省:平成29年国民生活基礎調査の概況より

厚生労働省:平成29年国民生活基礎調査の概況より

 

こんな人は寝たきりになる“危険大!”

 整形外科にかかる患者さんの多くは、膝が悪い、腰が痛いといった症状、あるいは骨折が大半を占めます。特に高齢になるとひざ痛の原因となる変形性膝関節症、坐骨神経痛や歩行障害を引き起こす腰部脊柱管狭窄症、そして骨折の原因となる骨粗鬆症、この3つはロコモの代表的な病気です。このうち2つ以上の病気が重なると、10年後に寝たきりになる危険性が高いと言われています。

 

背骨の病気、「腰部脊柱管狭窄症」

 ロコモの中でも腰部脊柱管狭窄症は、背骨の中の脊髄神経の通り道である脊柱管が狭くなることで、脊髄神経が圧迫される病気です。背骨は老化が進むと本来のS字状の形が直線的になったり、背骨の関節がゆるくなって骨がすり減ったりずれたりするなどの様々な要因で脊髄神経を圧迫します。この病気は非常にゆっくりと進行するため、異常に気付かないことも少なくありません。特徴的な症状として、背すじを伸ばして長い距離を歩くとふくらはぎが痛むけれど前かがみだと歩けるとか、休み休みなら歩ける「間欠性跛行(はこう)」と呼ばれる症状が見られます。

背骨の年齢的な変化

 

いつのまにか骨折している「骨粗鬆症」

 骨がもろくなる骨粗鬆症は骨折の原因となります。背骨の一部や、腕や脚の付け根、手首などが折れやすい代表的な部位です。しかも、背骨では折れても痛みがなく気付かないというケースも多く見られます。特にどこも痛くなくても、20歳の頃より2~3cm以上身長が縮んだという人は、骨粗鬆症や背骨の骨折を疑っていいと思います。もし背骨のどこか1カ所でも骨折してしまったら、ドミノ骨折といって隣の骨も次々に折れるという危険があるので、1カ所で済んでいるうちに早めの治療をおすすめします。

 

治療の基本は“運動”

軽めの運動はウォーキングがオススメです!

 腰部脊柱管狭窄症も骨粗鬆症も、日々の運動が重要です。腰部脊柱管狭窄症の場合は、痛くなりにくい前かがみ姿勢で歩いたり、自転車に乗ったり、あるいはスクワットなどで背骨にくっついている筋肉を鍛えるのが効果的です。また前かがみになっても症状がよくならない場合は、背骨の中(脊柱管;せきちゅうかん)を広げる手術をすることもあります。15年前と比べて技術が格段に進歩し、体への負担を極力抑えた手術が可能になっています。
 骨粗鬆症対策には毎日のウォーキングがベストです。不幸にも折れてしまった場合は折れた骨を固定するコルセットなどの装具も治療に使われますが、きちんと装具をして1年経っても骨がくっつかない患者さんは実に2~3割にものぼります。特に腰椎はひとたび骨折すれば必ず変形が残ってしまいますので、最も大切なのは予防です。まずは健康診断で骨密度を測ってみましょう。静岡市民ならワンコイン(500円)で気軽にできますよ。

 

 

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