静岡済生会総合病院 医学研究センターの活動
当院では医学研究センターを設置し、疾患の原因や病態の解明、新たな診断法・治療法・ケア法等の開発を通じ、医学・医療の発展に寄与することを目指しています。
研究内容は、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に基づき、倫理コンプライアンス委員会において審議され、承認を得た上で実施しています。研究成果は論文および学会発表等にて公表しています。
通常の診療における臨床研究に関しては「情報公開(オプトアウト)」欄にて、新たな取り組みについては臨床研究法に基づき実施し、「2025年度の先進的なとりくみと研究概要」欄にてご紹介します。
また、職員の研究のサポートを行い、院内研究発表会での発表、および静岡済生会総合病院医学雑誌への掲載を進めております。掲載された研究については、下欄のPDFをご覧ください。
医学研究センターの活動についてのお問い合わせは、次のメールアドレスをご利用ください(kyoiku@siz.saiseikai.or.jp)。
医学研究センター
榛葉 俊一(精神科)
当院における臨床研究に関する情報公開
人を対象とした臨床研究は、患者さん本人や家族へ文書および口頭で説明を行い、同意を得てから行われます。このような同意取得をオプトイン(opt in)といいます。
臨床研究の中では、患者さんへの侵襲や介入(注)がなく、これまでの診療情報、検査値、画像、診療のために採取し検討が終了した生体試料のみを用いる臨床研究もあります。このような臨床研究については、個々の患者さんから直接同意を得る代わりに、ホームページなどで臨床研究についての情報を公開し、自分の情報などが研究に使用されることが拒否できる機会を保障することが必要とされています。このような手法をオプトアウト(opt out)といいます。下記の臨床研究の対象に該当され、研究への参加を希望されない場合は各研究の担当者までご連絡ください。
注)
侵襲:検査、処置、手術、投薬などを行うこと
介入:投薬、手術などの治療を行う、または行わないこと
| 科名 | 研究事業 | 研究内容 | リンク先 |
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| 外科 | 一般社団法人 National Clinical Database(NCD)の 手術・治療情報データベース事業 |
一般社団法人 National Clinical Database(NCD)の 手術・治療情報データベース事業への 参加について NCDを基盤とした保険請求データ(DPC・レセプトデータ)の収集と研究利用について |
一般社団法人 National Clinical Database(NCD) ホームページ |
| 外科 | 閉鎖孔ヘルニアについての研究 | 患者さんへ | |
| 外科 | 右側結腸癌に対する 開腹・腹腔鏡・ロボット支援手術の 短期成績の比較検討の研究 |
患者さんへ | |
| 整形外科 | 日本整形外科学会症例レジストリー (JOANR) |
日本整形外科学会 症例レジストリー(JOANR) 構築に関する研究について |
日本整形外科学会 症例レジストリー(JOANR) ホームページ |
| 整形外科 | 日本における 大腿骨近位部骨折の適正治療を 目指したナショナルデータベース事業 |
日本における大腿骨近位部骨折の 適正治療を目指した ナショナルデータベースの 作成への協力について |
NPO法人 日本脆弱性骨折ネットワーク |
| 整形外科 | 特発性大腿骨頭壊死症(ONFH)の全国疫学調査 | 特発性大腿骨頭壊死症の患者様へ | |
| 心臓血管外科 | 一般社団法人 National Clinical Database(NCD) 手術・治療情報データベース事業 |
一般社団法人 National Clinical Database(NCD)の 手術・治療情報データベース事業への 参加について NCDを基盤とした保険請求データ(DPC・レセプトデータ)の収集と研究利用について |
一般社団法人 National Clinical Database(NCD) ホームページ |
| 脳神経外科 | 日本脳神経外科学会 データベース研究事業 (Japan Neurosurgical Database:JND) |
日本脳神経外科学会ホームページ | |
| 脳神経外科 | 国立循環器病研究センター 「レセプト等情報を用いた脳卒中、 脳神経外科医療疫学調査 (J-ASPECT Study)」 |
J-ASPECT 研究参加施設にて 脳卒中・脳神経外科・循環器病関連の 治療を受けられた 患者さん・ご家族様へ |
脳卒中、脳神経外科医療疫学調査 (J-ASPECT Study)ホームページ |
| 脳神経外科 | 水頭症患者の治療成績に関する後方視的観察研究 | 患者さんへ | |
| 耳鼻咽喉科 | 日本における 頭頸部悪性腫瘍登録事業 |
頭頸部癌で通院歴のある患者さんへ | |
| 耳鼻咽喉科 | オールジャパン全国調査による 難治性中耳炎(OMAAVおよび好酸球性中耳炎)の 実態と治療成績の検討 Japanese EOM-OMAAV Cohort Study (JEOC) |
患者さんへ | |
| 皮膚科 | 皮膚の遺伝関連性希少難治性疾患群の網羅的研究(掌蹠角化症のレジストリ作成) | 患者さんへ | |
| 循環器内科 | 日本循環器学会 循環器疾患診療実態調査 (JROAD) |
レセプトおよびDPCデータを用いた 循環器疾患における医療の質に関する 研究について |
循環器疾患診療実態調査(JROAD) ホームページ |
| 不整脈科 | 循環器疾患診療実態調査(JROAD)の データベースとCRT患者の 予後に関わる因子に関する研究 |
当院で両室ペーシング機能付き 植込型除細動器移植術、 両心室ペースメーカー移植術を 受けられた患者さん・ご家族様へ |
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| 消化器内科 | 消化器内視鏡に関連する 疾患、治療手技データベース構築 (多機関共同 前向き観察研究) |
日本消化器内視鏡学会が行う 消化器内視鏡に関連する疾患、 治療手技データベース構築 (JED Project)への参加について |
日本消化器内視鏡学会JED-Project ホームページ |
| 消化器内科 | Japan Endoscopy Database (JED) Projectにおけるデータバンク事業 |
患者さんへ | |
| 脳神経内科 | 中大脳動脈皮質枝の位置について | 中大脳動脈皮質枝の位置についての研究 | |
| 産婦人科 | 日本産科婦人科学会 周産期登録事業 |
日本産科婦人科学会 周産期登録事業への参加について |
日本産科婦人科学会 ホームページ |
| 産婦人科 | 日本産科婦人科学会 婦人科悪性腫瘍登録事業 |
日本産科婦人科学会 婦人科悪性腫瘍登録事業への参加について |
日本産科婦人科学会 ホームページ |
| 産婦人科 | 日本産科婦人科内視鏡学会 内視鏡下手術および 合併症登録データベース事業 |
当院にて産婦人科内視鏡下手術を 行われた患者様へ |
日本産科婦人科内視鏡学会 |
| 小児科 | 出生時の予防的点眼の有無による クラビット点眼の処方数の変化 |
患者さんへ | |
| 救命救急科 | 全身CT異常所見スクリーニングモデルの開発(後方視的、多機関共同研究) | 当院全身CT検査を行った患者様 | |
| 血液内科 | 造血器疾患における 好中球パラメーターの 臨床的意義の検討 |
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| 血液内科 |
活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT) 凝固波形パターンの臨床的意義の解析 |
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| 血液内科 |
画像処理ソフトを用いた 尿蛋白分画の定量的評価法の開発 |
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| 呼吸器内科 |
癌および癌微小環境の 蛋白発現と免疫治療効果との関係 |
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| 呼吸器内科 | 当院における進行期肺癌の発見契機と 初回治療導入に影響を与える因子についての 後ろ向き研究 |
患者さんへ | |
| 院内がん登録 | 国立がん研究センターによる 院内がん登録全国収集データの 二次利用について |
院内がん登録とは | |
| 院内がん登録 | がん診療均てん化のための 臨床情報データベース構築と 活用に関する研究 |
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| 看護部 | 呼吸数測定の現状と強化に向けた取り組み | ||
| 看護部 | 健康管理センターで 骨粗しょう症検診を受けた 受診者のデータからFOSTA指標と YAM値を分析しBMIとの 妥当性を検証する |
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| 栄養管理科 | 大腿骨近位部骨折患者に対する 栄養管理についての後ろ向き研究 |
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| リハビリテーション科 | 大腿骨近位部骨折クリニカルパスにおいて、 リハビリでの最終アウトカム(術後12日にBarthal Index60点)を 達成できる要因の調査 |
患者さんへ | |
| TQRMセンター | メロペネム(MEPM)使用量増加と 再開期の新規入職医師の影響についての研究 |
医薬品及び医療機器の適応外使用等に関する情報公開
医薬品及び医療機器を定められた方法以外で使用(適応外使用等)する場合に、患者さんへの説明を省略する医療行為についての情報を公開しています。
医薬品及び医療機器は厚生労働大臣が承認した内容で使用することが求められています。しかし、治療の必要上、やむを得ず承認された内容とは異なる使用(適応外使用)や承認されていない薬品・機器(未承認医薬品・医療機器)を使用する場合があります。その場合は、病院内の倫理・コンプライアンス委員会で使用の必要性があるか、有効性・安全性等の面から問題がないかを審議し、承認した上で使用することとしています。
適応外使用等の医療行為を行う場合、通常は、事前に医師等の医療従事者が文書又は口頭で説明を行い、患者さんからの同意を得ます。しかし、科学的に相当の根拠があって、倫理的な問題が極めて少なく、患者さんに有益であると判断された以下の医療行為については、病院のホームページ上にて情報公開のもと、文書又は口頭による説明・同意取得を例外的に簡略化することを、病院内で承認しております。
当該医療行為を希望されない場合、その医療行為を拒否することができます。拒否される場合でも、ご自身の診療において不利益を受けることは一切ございません。
本件について詳細が知りたい場合、ご質問がある場合、拒否されたい医療行為がある場合は、当院までお問い合わせください。
問い合わせ先:薬剤部 医薬品情報室
2025年度の先進的なとりくみと研究概要
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手外科・整形外科研究
研究員:矢﨑 尚哉 (副院長・手外科・マイクロサージャリーセンター部長兼リハビリテーション科長)タイトル 末梢静脈穿刺および末梢静脈カテーテル留置に伴う合併症の低減の取り組み 研究員 矢﨑 尚哉 (副院長・手外科・マイクロサージャリーセンター部長兼リハビリテーション科長) 概要 末梢静脈穿刺および末梢静脈カテーテル留置は総合病院において治療に不可欠な処置である。現状では視診および触診により静脈の位置を把握して穿刺している。2019年以降、神経症状を伴う合併症数を全例記録しているが、禁忌としている橈骨茎状突起周辺での穿刺に伴う橈骨神経障害は減少していない。Difficult intravenous access(以下DIVA)と呼ばれる静脈穿刺困難例においては前腕部の静脈の同定が視診、触診では困難で、橈骨茎状突起の周辺の橈側皮静脈のみが同定可能な例が多いからである。1年前から看護部、医療情報課と協働し、穿刺回数、カテーテルの生存期間を記録して、データを抽出可能としている。このデータを解析することで、DIVAとなる因子が明らかになることが期待されている。
DIVAに対処する方法として超音波診断装置を利用した静脈穿刺が有用とされている。しかし、モニターと穿刺部位の両方を見ながら穿刺するのには習熟が必要である。また救急車内やヘリコプター内で血管穿刺を行う際には揺れを伴うため、モニターと穿刺部位の両方を見ながら穿刺するのには困難を伴う。2024年、足立らはスマートグラスとハンディサイズの超音波診断装置を使用して、視点を動かさずに穿刺する方法を提案した。本法は鶏肉を使用して検討されたが、臨床応用はされていない。今後、モニターを見ながら穿刺する方法とスマートグラスを使用して穿刺する方法の比較検討を行っていきたい。 -
病理学研究
研究員:北山 康彦 (病理診断科 部長)タイトル Amoy Dx検査参考値陰性例におけるEGFR(IHC)の陽性意義と、肺癌コンパクトパネルによる再検証の検討 研究員 滝浪 雅之(病理診断科、臨床検査技師) 概要 Amoy DxによるEGFR遺伝子検査で参考値陰性と判定された1症例において、EGFR L858R免疫染色が陽性を示した。当該症例は生検検体が極めて微小であり、核酸濃度が推奨基準値を満たしていなかったため、遺伝子検査結果は参考値として報告されていた。しかし、免疫染色でEGFR L858R陽性を示した。そこで腫瘍細胞割合5%以上を推奨基準とする肺癌コンパクトパネルDxを用いて再検査を実施した。その結果、EGFR L858R変異陽性が確認された。Amoy Dxにおける参考値陰性は検体条件に起因する偽陰性であった可能性が高いと考えられた。
研究結果から、EGFR L858R免疫染色が遺伝子検査結果の偽陰性を疑う契機となり得ることを示しており、特に検体量不足や核酸量不足により遺伝子検査結果の解釈が困難な症例において、有用な補完的診断法となる可能性が示唆された。 -
呼吸器内科研究
研究員:土屋 一夫(呼吸器内科 医長)タイトル 癌および癌微小環境の蛋白発現と免疫治療効果との関係 研究員 土屋 一夫(呼吸器内科 医長) 概要 背景:免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor: ICI)は、非小細胞肺癌(non-small cell lung cancer: NSCLC)の治療において中心的な役割を担っている。しかし、重篤な免疫関連有害事象のリスクを考慮すると、治療選択のための高精度な予測バイオマーカーが求められているものの、その候補は依然として限られている。本研究では、p53、LKB1、およびNRF2タンパク質の発現とICIの治療効果との関連を評価することを目的とした。方法:本後ろ向き解析では、2017年から2025年の間に当施設で一次治療としてICIを含む治療、または上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬を受けたNSCLC患者を対象とした。診断時に採取された検体を用いて免疫組織化学染色を行い、p53、LKB1、NRF2の発現および腫瘍浸潤リンパ球(tumor-infiltrating lymphocytes: TIL)を評価した。さらに、これらのバイオマーカー発現と臨床転帰との関連を検討した。結果:ICI治療群の評価可能な43例のうち、p53異常発現は46.5%、LKB1発現消失は13.9%、核優位型NRF2発現は34.9%に認められた。p53異常発現はTILsの増加および無増悪生存期間(progression-free survival: PFS)の延長と関連していた。一方、LKB1発現消失は免疫抑制的な腫瘍微小環境およびPFSの短縮と相関していた。また、核優位型NRF2発現は全生存期間の短縮と関連していた。結論:p53およびLKB1の免疫組織化学的発現パターンは、それぞれ異なる免疫微小環境の特徴と関連していた。これらのマーカーは、NSCLC患者におけるICI治療効果を予測するサロゲートマーカーとして有用である可能性が示唆された。
論文 K Tsuchiya, T Tsunoda, H Igarashi, K Hattori, T Ito, T Akashi, Y Oyama, M Ikeda
Translational Lung Cancer Research 14 (10), 4527-4540
タイトル サルコイドーシスの診断精度を高めるための追加の気管支粘膜生検の役割 研究員 角田 智(呼吸器内科 医師)、大山 吉幸(呼吸器内科 医長) 概要 背景と目的:サルコイドーシスの診断において、非壊死性肉芽腫の同定は不可欠である。この目的のため、経気管支肺生検(TBLB)および経気管支針吸引生検(TBNA)の有効性は確立されているが、気管支内生検(EBB)の役割については依然として不明確である。本研究は、サルコイドーシスの診断におけるEBBの追加的診断価値およびその診断率に影響を与える要因を評価することを目的とした。方法:本後ろ向き横断研究には、2016年8月から2023年4月の間に、サルコイドーシスと暫定診断され、静岡済生会総合病院呼吸器内科に入院した46名の患者が対象となった。そのうち、EBBを受けた25名の患者を、EBB群(EBBにより診断された)と非EBB群(TBLB、TBNA、または臨床的に診断された)に分類した。EBBの診断収率に影響を与える要因を特定するため、患者の背景特性を分析した。 結果:EBB単独の診断収率は24%(25名中6名)であった。両群間の患者の背景特性に有意な差は認められなかった。EBBを追加した結果、TBLBの診断率は47.8%から60.9%に、TBNAの診断率は52.6%から57.9%に上昇した。3名の患者では、EBB単独で組織学的診断が得られた。 結論:EBB単独の診断率は比較的低かったものの、一部の症例では診断につながった。TBLBまたはTBNAをEBBと併用することで、全体的な診断率が向上する可能性がある。
論文 T Tsunoda, Y Oyama, T Nuki, T Ito, R Mori, T Akashi, K Tsuchiya, M Ikeda
Sarcoidosis, Vasculitis, and Diffuse Lung Diseases 42 (2), 16166
タイトル 気管支鏡検査の前処置における抗コリン薬の有用性の検討 研究員 土屋 一夫(呼吸器内科 医長) 概要 背景:気管支鏡検査は呼吸器疾患の診断および管理に不可欠である。しかし、気道分泌物や気道反射は、検査の質や患者の快適性を損なう可能性がある。アトロピンやヒドロキシジンなどの抗コリン薬による前投薬は、これらの生理学的反応を軽減する目的で従来から使用されてきたが、近年のガイドラインでは、血行動態への影響や有効性に関するエビデンスの不確実性から、ルーチンでの使用は推奨されていない。本研究では、現代の気管支鏡検査における抗コリン薬前投薬の有効性を評価することを目的とした。方法:経気管支生検および超音波ガイド下針生検を施行した患者を対象に、単施設横断研究を実施した。2022年7月から2023年9月までに、アトロピン0.5 mgおよびヒドロキシジン25 mgを筋肉内投与による前投薬として受けた患者35例をA群とし、2024年12月から2025年3月までに前投薬なしで検査を受けた患者35例をB群とした。患者の苦痛度はVisual Analog Scale(VAS)を用いて評価した。背景因子の差を補正するため、逆確率重み付け法(inverse probability of treatment weighting: IPTW)を用いた傾向スコア解析を実施した。結果:計70例(各群35例)が解析対象となった。IPTW補正後、B群では唾液分泌および咳嗽に伴う苦痛が有意に強く、再度気管支鏡検査を受ける意思も有意に低かった(それぞれ p = 0.03、p = 0.02、p = 0.001)。また、B群ではリドカイン使用量が有意に多かった(p < 0.001)。一方、ミダゾラム投与量およびバイタルサインについては、両群間で有意差を認めなかった。結論:抗コリン薬による前投薬は、明らかな有害事象を伴うことなく、特に気道分泌物や気道反射に関連する検査時の苦痛を軽減する可能性が示された。現代の気管支鏡検査における前投薬の役割を明確にするためには、さらなるランダム化比較試験が必要である。
K Tsuchiya, R Miyamoto, T Tsunoda, T Ito, T Akashi, Y Oyama, M Ikeda
Respiratory Investigation 64 (1), 101333
また希少な病態、新規の検査や治療戦略を日々考察・考案するために最新の情報を収集する努力をしており、新規の知見については症例報告として学会や論文などで報告している。
論文 T Tsunoda, Y Oyama, R Miyamoto, T Ito, T Akashi, K Tsuchiya, M Ikeda. Regorafenib induced interstitial pneumonia in a patient with refractory rectal cancer. Respirology Case Reports 13 (8), e70286
K Tsuchiya, R Miyamoto, T Tsunoda, T Ito, T Akashi, Y Oyama, M Ikeda. Diffuse Alveolar Hemorrhage Associated with Herbal Medicine: A Case Series and Literature Review. Internal Medicine 64 (17), 2637-2640
K Tsuchiya, T Nuki, T Tsunoda, T Ito, R Mori, T Akashi, Y Oyama, M Ikeda. Successful Immunochemotherapy for Advanced Lung Adenocarcinoma Obstructing the Left Brachiocephalic Vein Complicated by Chylothorax. Respirology Case Reports 13 (5), e70199
K Tsuchiya, R Suzuki, R Miyamoto, T Tsunoda, T Ito, R Mori, T Akashi, Y Oyama, M Ikeda. Ovarian Cancer with TTF-1-positive Giant Pleural Dissemination. Internal Medicine 64 (11), 1712-1715
T Tsunoda, K Tsuchiya, Y Oyama, S Yazawa, R Miyamoto, T Ito, T Akashi, Y Oyama, M Ikeda. Amiodarone‐Induced Pneumonia Without Foamy Macrophages in the BALF: A Diagnostic Challenge Unveiled by Cryobiopsy. Respirology Case Reports 14 (2), e70503 -
血液内科研究
研究員:海老澤 和俊(血液内科 医長)タイトル 活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)凝固波形パターンの臨床的意義の解析 研究員 海老澤 和俊(血液内科 医長) 概要 院内で測定されたAPTTの凝固波形曲線の二次微分に相当する曲線を代数的に近似し、係数を求め、肉眼的な波形パターンと対応させ主成分解析を行ったところ、波形ごとに分類することができた。それらをもとに正常パターン、atypical peakパターン、S-shapeパターン、左脚ブロック様パターンに分類し、正常以外のパターンでループスアンチコアグラントの検出率が高くなることを見いだした。 -
泌尿器科研究
研究員:木村 亮輔 (泌尿器科 部長)タイトル 骨盤臓器脱手術(RSC、TVM)後の排尿機能に関する後ろ向き比較研究 研究員 木村 亮輔 (泌尿器科 部長)、宮下 由紀恵 (女性泌尿器科 科長) 概要 研究内容:本研究は、骨盤臓器脱(pelvic organ prolapse:POP)に対して施行されるrobot-assisted sacrocolpopexy(RSC)と transvaginal mesh surgery(TVM)の2術式について、女性の下部尿路症状に与える影響を比較検討することを目的とした後ろ向き研究である。
研究成果:RSC群51例、TVM群21例が対象となり、年齢・BMI・POP-Qステージなどの基本背景には大きな差を認めなかった。RSC群はTVM群と比較して手術時間は長いものの出血量は有意に少なく、両群ともIPSSおよびQOLスコアは術後に有意な改善を示した。一方で、OABSSについては明らかな変化を認めなかった。RSC群は術後QOLスコアが一見良好な結果であったが、propensity score matchingにより背景を揃えた解析では、RSCとTVMの間で術後LUTSやその改善度に有意な差は認めなかった。また、de novo SUIの発症率にも明確な差はなく、両術式とも女性POP患者の排尿症状改善に有効であることが示された。これにより、患者背景、周術期リスク、術者経験、患者との意思決定を踏まえた柔軟な術式選択が妥当であることが示唆された。
論文 Research and Reports in Urology “Short-Term Functional Outcomes After Robot-Assisted Sacrocolpopexy Versus Transvaginal Mesh Surgery for Pelvic Organ Prolapse: A Retrospective Comparative Study”(DOI: 10.2147/RRU.S554947) -
耳鼻咽喉科研究
研究員:望月 大極 (耳鼻咽喉科 副部長)タイトル 水痘帯状疱疹ウイルスによる多発神経マヒおよび急性網膜壊死 研究員 望月 大極 (耳鼻咽喉科 副部長) 概要 Otolaryngology Case Report:Shiho Hozumi, Yuki Shimodaira, Shiori Endo, Daiki Mochizuki. Varicella-zoster virus-induced glossopharyngeal and vagal nerve palsy presenting with severe dysphagia and delayed acute retinal necrosis: a case report DOI:10.1016/j.xocr.2026.100749 -
生理・行動・画像研究
研究員:榛葉 俊一 (精神科 部長)タイトル 精神症状の新たな生理学的評価法の開発 研究員 榛葉 俊一 (精神科 部長) 概要 アロマセラピーにおける感覚変化と自律神経活動調節との関連を心拍変動検査で明らかにする:ダイダイ油とバラ水を用いた研究」を論文にまとめた(共著者 特定看護師 朝日恵美)。アロマセラピーは、日常生活から医療の現場まで、多くの場において、リラクゼーションを含めた心身への効果発現のために使用されている。当院でも、がん患者さんの化学療法を、患者がリラックスして受けられるための一つの補助療法として検討されている。しかし、アロマセラピーの効果発現には個人差があり、効果を評価するための目安が必要である。
本研究では、健常者において、心拍変動検査による自律神経活動指標を用いて、アロマセラピーの効果を評価できるのかどうかを、ダイダイ油とバラ水を用いて検証した。その結果、両者ともに、副交感神経を増加させることが心拍変動検査により明らかになり、アロマセラピーにおける客観的指標となることを確認しった。
さらに、ダイダイ油は心理的な変化と自律神経変化が相関していた。アロマによる心理的変化がリラクゼーションと密接に関連していることが考えられた。一方、バラ水の自律神経変化は心理的な変化からは独立して出現していた。心理的な変化が認められなくても、自律神経効果が出現することが示された。
心拍変動検査による自律神経評価をアロマセラピーに導入することで、多面的に様々なアロマを利用できる可能性が示唆された。今後、がん患者の化学療法時への使用に応用していくことを検討する。
論文 ShinbaT, Asahi E, Sakuragawa S. Heart Rate Variability Sensing Can Reveal Characteristic Autonomic Modulation via Aromatherapy in Relation to the Effects on Feeling: A Study on Citrus Aurantium Oil and Rose Water. Sensors (Basel) 2025, 25, 6906. doi.org/10.3390/s25226906
Mizuho Takeda, Toshinobu Takeda, Toshikazu Shinba. Autonomic characterization in adults with attention deficit hyperactivity disorder assessed by heart rate variability measurement during a three-behavioral state paradigm: A pilot study. PCN Rep. 2025 Aug 12;4(3):e70176. doi: 10.1002/pcn5.70176.
タイトル ベッドマット下設置タイプの心拍・呼吸・体動センサーによる睡眠覚醒リズムの評価 客観的な指標を用いたせん妄予防法の開発 研究員 赤堀 照美(認定看護室 認知症特定看護師)、風間 梓 (南4階病棟 認知症特定看護師) 榛葉 俊一(精神科 部長) 概要 機器の調整をしている。実機を用いた研究着手は次年度より開始する。 - 2022年度 研究概要と成果を用いた先進的なとりくみ
- 2023年度 研究概要と成果を用いた先進的なとりくみ
- 2024年度 研究概要と成果を用いた先進的なとりくみ
静岡済生会総合病院医学雑誌
本雑誌は、静岡県済生会・静岡済生会総合病院における研究・医療・教育・福祉活動などを掲載し、院内のみならず、社会における医学・医療の発展に寄与し、人の健康と福祉に貢献することを目的としています。
医学、歯学、看護学、薬学、心理、福祉、医療技術、医療事務などの幅広い領域から、研究的な内容だけでなく、日常業務の発展的な内容や毎年開催される院内研究発表会の抄録も掲載しております。
ご意見やご質問がありましたら、教育センターまでお願い致します。
