• 標準

背景色

産婦人科

RSウィルス母子免疫ワクチン(アブリスボ)接種について

2024年11月11日より、妊婦さんに接種可能なRSウイルスワクチン「アブリスボ」が当院でも接種できるようになりました。
RSウイルス感染症は、6カ月未満の赤ちゃんが感染すると重症化しやすく、場合によっては肺炎や急性脳症などを引き起こすことがあります。
妊婦さんにワクチンを接種することにより母体内でRSウィルスに対する抗体(感染を阻止する抗体)を産生し、その抗体が胎盤を通じて母体から胎児へ移行することで出生後赤ちゃんの感染を予防します。

◆接種費用 33,000円(税込)
当院で接種を希望される方は、下記時間内にお電話にてご予約ください。

◆対象者 当院で出産を予定の妊婦さん

◆ご予約・お問い合わせ
054-285-6171(代表)産婦人科外来 
平日14時から16時

 


RSウィルス感染症について

RSウィルスは世界中に分布していて、生後2年以内にほぼ100%の赤ちゃんが感染します。
赤ちゃんの肺炎の約半分、また、気管支炎の半分以上がRSウィルスによるものといわれています。症状は感冒症状から上気道症状(くしゃみ、鼻水)、下気道症状(咳、呼吸困難)と多彩です。大人は風邪程度で済むことが多いですが、6カ月未満の赤ちゃんが感染すると重症化しやすく、場合によっては肺炎や急性脳症などを引き起こします。年間1214万人の2歳未満の赤ちゃんがRSウィルスに感染し、そのうち約3万人が入院治療しています。生後12か月の入院発生率がピークになるので、生直後から予防することが大切です。

 


現行のRSウィルス感染の予防薬

現在、使用可能な重症化抑制薬は抗RSウィルス抗体のシナジスですが、適応が基礎疾患を持っていたり、早産の赤ちゃんに限定されているため、重症化して入院する大部分の基礎疾患のない正期産の赤ちゃんには使用することはできません。


RSウィルス母子免疫ワクチン(アブリスボ筋注)

アブリスボは、妊婦さんに接種することにより母体内でRSウィルスに対する抗体(感染を阻止する抗体)を産生し、その抗体が胎盤を通じて母体から胎児へ移行することで出生後赤ちゃんの感染を予防します。20245月末から一般診療で施行可能となりました。


有効性は?

妊婦さん7000人を対象とした治験(MATISSE試験)では、接種した妊婦さんから生まれた赤ちゃんは接種していない妊婦さんから生まれた赤ちゃんと比べて下気道感染が半分程度、重症化率は4分の1程度に減少しました。

 


副作用は?

同じ治験によると副作用は、接種部位の痛み(40%)、筋肉痛(26.5%)と局所反応が主であり、全身症状は筋肉痛程度で新型コロナウィルスワクチンのような発熱症状はほとんどないと報告されています。


早産リスクは?

ワクチン接種の結果、早産を誘引するかどうかが気になるところですが、同じMATISSE試験では早産リスクのない妊婦さんの間でワクチン接種の有無で早産率に差が出ていません(20241013日の米国CDCの発表でも早産への影響は非常に低いと評価されています。ただし、今後の追加研究でリスク因子が出てこないとの明文化はありませんでした)。

 


アブリスボを妊娠中に接種した方へ

出生直後乳児にシナジスを赤ちゃん投与することは原則的に行いません。シナジスとアブリスボが重複した場合の副作用などは明らかになっていません。小児科医師に母体へのワクチンの接種歴の有無を正確にお伝えする ことが重要です。妊娠2436週にワクチン接種を施行した場合は母子手帳の予防接種の記録 (5)その他の予防接種欄に必ず接種シールを貼付してください。赤ちゃんが感染し、小児科外来に受診した際は母子手帳を持参し、ご提示いただくようにお願いします。


※ご不明な点は、産婦人科外来までお問い合わせください。産婦人科医が妊婦さんの疑問や不安にお答えします。本ワクチンはあくまで自由診療であり、相談を受けたからといって接種を強制することはいたしません。当科では本ワクチンが、赤ちゃんの発育の一助になることを願っております。

 

 

 

参考文献

1. 国立感染症研究所: IASR Vol. 43;p79-81: 2022 4 月号.

https://www.niid.go.jp/niid/ja/rs-virus-m/rs-virus-iasrtpc/11081-506t.html

2. 国立感染症研究所: IASR Vol. 39; p207-209: 2018 12 月号.

https://www.niid.go.jp/niid/ja/id/542-disease-based/alphabet/respiratory-syncytial/idsc/iasr

topic/8473-466t.html

3. Kobayashi Y, et al. Epidemiology of respiratory syncytial virus in Japan: A nationwide claims

database analysis. Pediatr Int 2022;64:e14957.

4. Yanagisawa T, et al. Survey of hospitalization for respiratory syncytial virus in Nagano,

Japan.Pediatr Int 2018;60:835-838.

5. 厚生労働省.予防接種に関する基本的な計画.

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku

kansenshou/kihonteki_keikaku/index.html

6. シナジス筋注液50mg/シナジス筋注液100mg 添付文書. 医薬品医療機器総合機構.

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/6250404

7. 日本 アブリスボ筋注用 添付文書. 医薬品医療機器総合機構.

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/631350A

8CDC MNWR Weekly / October 13, 2023 / 72(41);1115–1122

https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/72/wr/mm7241e1.htm?s_cid=mm7241e1_w

9.日本産科婦人科学会お知らせhttps://www.jsog.or.jp/news/pdf/20240627_ippan.pdf