• 標準

背景色

病院発行コンテンツ NEW

home vol.50:糖尿病はこわい?こわくない?

済生会ドクターがお答えします!


内分泌代謝科部長 稲葉直之医師

 

糖尿病は尿ではなく血管の病気です

糖尿病は、血管を流れるブドウ糖の濃度(血糖値)が高い状態が続く病気。過剰な血糖をコントロールするために膵臓がインスリンを分泌し続けた結果、分泌量が減ったり効果が弱まったりして、血管内に糖があふれます。その結果、血液が濃くなって流れが滞り、血管に様々な悪影響をもたらします。過剰になった糖が尿に混ざることから糖尿病という名前になりましたが、実は血管の病気なのです。

 

例えるなら「血管が早く年を取ってしまう」病気

血糖値が高い状態が続くと、全身の血管が傷んでしまいます。言ってみれば、血管が早く年を取っていくようなもの。放っておくと30代40代でも脳卒中や心筋梗塞を引き起こしたり、がんや認知症、骨粗鬆症などにもかかりやすくなります。腎不全を起こせば透析治療が必要になりますし、眼底出血で視力を損なう方もいます。糖尿病が直接の原因となって命を落とす人はほぼいませんが、様々な合併症の原因となるという点ではこわい病気です。

★糖尿病の主な合併症「しめじ」と「えのき」

神経障害 壊疽(えそ)
目の網膜症 脳卒中
腎症 虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞など)

 

原因は遺伝?生活習慣?

糖尿病には免疫機能を原因とする1型糖尿病、妊娠中に起こる妊娠糖尿病などいくつか種類があり、中でも生活習慣に関わりが深い糖尿病は2型糖尿病と呼ばれます。食べすぎや運動不足で体重が増えているとか、飲酒や喫煙といった生活習慣が糖尿病のリスクに大きく関わることが知られています。
一方、2型糖尿病の原因には遺伝が絡んでいることも多く、家族や親族に2型糖尿病の患者さんがいるとかかりやすいと言われますが、親族全員が糖尿病になるとは限りませんし、遺伝に関係なく発症する人もいます。また、遺伝というより同じ食習慣で暮らしていることが家族みんなの糖尿病リスクを高めているケースも考えられます。
つまり、いわゆる糖尿病の家系であってもなくても、糖尿病リスクを抑えるためには生活習慣を整えることが大切なのです。

 

一度かかると「完治」は難しい

血糖値は薬などの治療によって改善することができます。ただ、治療でいったん血糖値が下がっても「完治」とはいきません。定期的に通院を続け、血糖値が上がりやすい身体と一生向き合っていく、手ごわい病気と言えます。生活習慣を整えることで薬をやめることができた患者さんも大勢いますので、そこを目指してほしいと思います。

 

デジタルマガジン「home Web版」一覧ページへ