Home vol.31:DOCTOR'S VOICE VOL.51 病理診断科
病理診断科
北山 康彦
副院長/病理診断科部長/厚生労働省死体解剖資格認定/日本病理学会指導医・専門医研修指導医/日本病理学会評議員/日本臨床細胞学会専門医・教育研修指導医/日本臨床検査医学会臨床検査管理医
DATA.1
病理診断科は患者さんから採取した細胞や組織を診るエキスパート。
他科の医師と協力して正確な診断を目指します。病理医は数が少なく、今年12年ぶりに当院に戻った北山医師は院内外から引っ張りだこです。
DATA.2
熊本生まれ。浜松医大の大学院を経て外科医から病理医へ。当院赴任前は2つの大学で教授も務めた。実は少年時代から動物好きで、雷魚、ジュウシマツやハツカネズミなどを育てた経験も。
画像で見ると、がん細胞は
悪い顔をしています。
アメリカで病理医といえば、医師の中で最も評価の高い職務の一つなのですが、日本では最も専門医の少ない絶滅危惧種といわれています。私はもともと外科医としてスタートし、大学院に戻って病理を学んだのを機に、周囲の要望もあって病理医を務めるようになりました。臨床経験のある病理医は稀だったので、重宝だったのでしょうね。当院に来てからも、1日数件は診断を依頼する画像が全国から送られてきます。
正常な組織と比べて、がん細胞は悪い顔をしています。核が変形していたり向きが乱れていたり。病理医は画像を見ながら、どんな異常なのか、良性か悪性かという判断をしていきます。どんな薬を使っているのかなども、画像を見ればすぐわかるんですよ。
組織を直接見るうちにわずかな特徴に気づいて、「読めた」と思う時があるんです。病院を転々としてもわからないような難しい病気を診断し、「特定疾患」とわかったために治療費が大幅に安くなったケースもあります。これで元気になれると思うと、嬉しいですね。
画像技術の進歩と共に病理医の
活動範囲が広がっています。
院内の患者さんの病理診断は基本的に顕微鏡で行っていますが、画像技術やネット環境の進歩によって、遠くの病院にいる患者さんの画像診断はもちろん、遠隔操作による診断もできるようになってきています。最近も遠くインドネシアから診断の依頼が来ました。東南アジアなどの病理医が存在しない国では、遠隔診断は非常に有用です。私も以前、厚労省とJAXAと協力して通信衛星を用いた遠隔病理診断実験に携わったことがあります。
将来的に映像が8Kの時代になれば、より鮮明な画像診断が可能です。またAI(人工知能)を組み合わせることで、自動診断も可能になります。難しい症例は海外のスペシャリストと話し合って診断していく時代も近いでしょう。
今後は病理医一人ひとりが専門性を高めると共に、病院同士の横のつながりを強めるべきでしょう。得意分野の病理医と情報を共有することで、より多くの患者さんに精度の高い診断が提供できるのではと考えています。
MINI Voice:治療の前に自分の体内の異変を画像で見ることができます
病理検査の結果は担当医がお伝えしますが、必要に応じて病理医から説明をする場合もあります。
担当医の診断の根拠が理解できるため、納得して手術などの治療に臨むことができます。
Home vol.31(PDF)ダウンロードはこちら