home vol.53:貧血はなぜ起こる?
貧血の種類や原因について解説します。

血液内科 部長 竹内隆浩医師
貧血とは?
血液中のヘモグロビン量が少なくなっている状態のこと
ヘモグロビンは赤血球に含まれ、酸素を全身に運ぶ働きを持つたんぱく質。ヘモグロビン不足で酸素の供給が減った状態が貧血です。貧血の診断ではヘモグロビン濃度の他、赤血球の大きさも測定します。よく知られている鉄欠乏性貧血は鉄不足によって赤血球が小さくなりますが、反対に赤血球が大きくなって数が減り、ヘモグロビン量が低下する貧血もあります。ちなみに、急に立ち上がったり長時間立ち続けたりしたときにめまいや立ちくらみが起きるのは、一時的に脳の血圧が下がるためで、起立性低血圧といって貧血とは異なります。
貧血になる原因は?
鉄欠乏性から骨髄の病気まで多種多様
貧血の原因は鉄分不足だけではありません。骨髄の病気から生じる場合もあれば、悪性腫瘍の影響で引き起こされている場合もあります。
●鉄欠乏性貧血
鉄分が不足してヘモグロビンが十分合成できないために起こる貧血。妊娠中などで体が多くの鉄を必要としている場合や、月経などの出血、鉄の吸収不良などが原因となります。
●巨赤芽球性貧血
赤血球をつくるのに必要なビタミンB12や葉酸が不足して生じる貧血。ビタミンB12は野菜にはほぼ含まれないためベジタリアンは不足しがち。逆に葉酸不足は野菜嫌いの方に多く見られます。
●腎性貧血
腎臓は赤血球をつくるエリスロポエチンというホルモンを分泌しています。この腎臓の働きが低下することで起こります。
●再生不良性貧血
血液をつくる工場の役割を果たす骨髄が免疫の異常により自分自身を壊してしまい、血液をつくる働きが低下します。
●骨髄異形成症候群(MDS)
血液をつくる骨髄の働きが過剰となって、いわば「不良品」のような血液を次々とつくってしまう病気。高齢者に多く見られます。
他にも、銅や亜鉛の不足で起こる貧血、寒さによる貧血など、さまざまな種類があります。
