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home vol.57:入院中も退院後も、患者さんに安心を【認知症ケアチーム座談会】

当院では入院患者さんの認知症の悪化を防ぐため、多職種による「認知症ケアチーム」が活動しています。チームが患者さんやご家族とどう向き合っているのか、メンバーに聞きました。

精神科医師 
榛葉俊一 
Toshikazu Shinba
医療ソーシャルワーカー 
澤口万起子 
Makiko Sawaguchi
認知症看護特定認定看護師 
赤堀照美 
Terumi Akahori
作業療法士 
中川貴博 
Takahiro Nakagawa
言語聴覚士 
杉山稔子 
Toshiko Sugiyama

 

家族が驚く、入院患者さんの「せん妄」

―高齢の方が入院すると、心身にどんな影響がありますか?

榛葉:認知症の方も、認知症でない方も、高齢の方が入院すると、病気や手術、入院という環境変化の影響などにより、入院後に混乱してしまうことがあります。少しぼーっとした状態で怒ったり、起きているのに夢を見ているような様子が見られたり、ここがどこで今何をしているのか分からなくなり、点滴の管を抜き「家に帰る」と言い張ったり、入院前とは別人のようになることもあります。これを「せん妄」と言います。

赤堀:せん妄には低活動性と過活動性があって、全然食べなくなってしまう方もいれば、眠らない、暴れる、服を脱ぐ、治療の装置を外すという興奮状態になる方もいます。ご家族がその様子にショックを受けて「入院したら認知症になった」と誤解することもあります。

榛葉:入院してすぐにせん妄になる方もいれば、少し経ってから起きることもありますね。

赤堀:多くは一時的なもので、入院の原因となった病気が良くなれば改善していきます。ただ、せん妄の期間が長くなるほど認知機能が衰え、認知症になるリスクが高まりますので、せん妄予防や早期回復が重要です。入院前から認知症の症状がある方はなおさら対策が必要です。私たち認知症ケアチームはそうした入院患者さんの認知症を防ぐために2024年6月から活動を始めました。ここにいるメンバーに加えて管理栄養士と薬剤師がチームを組み、病棟の看護師と連携してケアしています。

 

生活リズムを整え、日常に近づけていく

―具体的にはどんな対策をしているのでしょうか?

赤堀:当院では入院される患者さんに認知機能に関する聞き取り調査を行い、リスクの高い方を早い段階からチームと病棟が協力してケアする体制を整えています。まず原因疾患の治療が計画通り安全にできるよう、患者さんご本人やご家族などと話し、その方に合った個別ケアを探っています。精神的なサポートが大事ですから、患者さんの人となりを知ることが欠かせません。

榛葉:入院して体が思うように動かせなくなると、それが脳にも影響してきます。体を動かすことで脳が刺激されるので、低下した体の機能を早期から動かしていくのがリハビリの役割ですね。

中川:患者さんはベッドにいる時間が長いほど身体機能・精神機能共に衰えてしまいますので、私たち作業療法士はその方がなぜ動けないのか理由を探していきます。現疾患の治療状況を踏まえ血液検査やレントゲンなどの情報も考慮していきます。また、管理栄養士と相談して、どうしたら食事が取れ栄養が確保できるのか、主治医の先生に相談して薬の種類や服薬時間・量を調整して活動の時間を確保することもあります。生活のリズムを整え、現疾患・認知症など患者さんご本人の状態に合わせながら、なるべく早期から介入し入院前の生活に近づくようにしていきます。

榛葉:食事は非常に重要で、飲み込む機能が衰えると誤嚥性肺炎のリスクが高まりますね。そうした誤嚥対策を、杉山さんたち言語聴覚士が行っています。

杉山:病気やけがの症状として飲み込むことが難しくなったり、手術の前後や食欲がなくて食べていない期間があると口や咽(のど)の力が弱くなってしまいます。しかし、できる限り口から食べ続けていくことを目指し、どんなものなら安全に食べられるか評価を行います。また、管理栄養士さんと相談して、安全に食べられそうな物の中で患者さんの好みや希望をできるだけ叶えられるようにしています。少しでも食べることで栄養がつけば運動する力も出てきますね。

中川:食べられるようになれば栄養状態も改善し、運動の効果も高まります。良いサイクルができます。離床時間も増え、リハビリを行いながら様々な症状に対応できますし、身の回りのできることも少しずつ増えていきます。そうなると私たちもうれしいです。

赤堀:まず「食べること」が「起きること」につながりますね。

 

退院に向けた準備は入院時から

榛葉:認知症の進行を防ぐにはなるべく早期に退院して外の社会に戻ることが大事です。退院後、できる限り元の日常を取り戻すために相談員(医療ソーシャルワーカー)が活動しています。

赤堀:入院したその時から退院のことは考えていますよね。

澤口:病院とその方の生活をつなぐことが私たち相談員の役目です。既に介護保険サービスをご利用の患者さんに向けては、入院中のご様子の他、ケアやリハビリの内容など、病院での支援が退院後も継続できるよう、ケアマネジャーさんに情報を提供して不足のないサービスの調整を依頼しています。退院後直ぐにサービスの利用が必要な患者さんには介護保険の申請をお勧めし、ケアマネジャーを紹介いただける『地域包括支援センター』をご案内することも多くあります。また、心身機能の低下が著しく自宅に退院することが難しい患者さんには最適な施設や病院をご案内する等、退院後の生活基盤を整えていきます。

中川:リハビリでは、退院が近づくと、その方の状態に合わせ、安全に身の回りの動作が行えるように、移動する・食事をとる・服を着る・トイレ動作など、より具体的な練習をしていきます。また、ご家族へ介助方法の指導やサービスの提案、福祉機器の選定や、手すり設置などの住環境整備を行い、安全に生活ができるようにしていきます。

赤堀:退院後は、入院生活で低下した心身の機能を回復すること、安心して暮らせる環境を再構築することが必要。そしてご家族もサポートを頑張りすぎないことが、ケアを継続する最大の秘訣です。

 

回復を進める、多職種のつながり

―認知症ケアチームは実際どのように連携していますか?

赤堀:認知機能の低下が見られる患者さんは途切れることなく入院されています。そこで認知症ケアの専門職を中心に多職種が集まって一人ひとりの患者さんについて週1回協議し、その内容を踏まえて病棟の看護師とカンファレンスを行っています。病棟で困っていることなどもチームで共有しています。当院のスタッフは横のつながりが強く、意見も活発に交わして患者さんを支えています。

中川:例えば、リハビリで杖で歩く・トイレができるようになると病棟でも実践していきます。その際、病棟の看護師に方法や注意点・リスク等を説明して情報共有を行いながら、退院に向けて「できること」を増やしていきます。その方の状態を知り、その方に合った方法や接し方で多職種が同じ目標に向かって進んでいきます。

赤堀:病院は治療の場であるとともに、生活の場でもあります。認知症があってもなくても一人の人間としての尊厳が守られ、安心して治療を受けられる場です。私たちはご本人が一日も早く住み慣れた場所や穏やかな日常に戻れるようにサポートしていきます。

 

院内デイサービスで患者さんを支えています

入院患者さんで車いすに座れる方など状態が安定している方を対象に、病棟の一角でデイサービスを開設しています。一般のデイサービス施設のように、レクリエーションを通じて患者さんの機能回復を支えます。また病棟看護師や担当医師が患者さんの状態を見極める場ともなっています。

 

 

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